2007年 3月 26日  inswatch Vol. 347

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【4】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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生保の保険金不払い問題

保険金不払い問題がなかなか終わりません。3月14日に損保会社の第三分野商品に関する保険金不払いの調査結果が発表され、10社に行政処分が行なわれましたが、なかなかこれで一件落着というわけには行かないようです。
  http://www.fsa.go.jp/news/18/hoken/20070314-1.html 
  http://www.fsa.go.jp/news/18/hoken/20070314-2.html

生保会社でも全社あげて過去の不払いを調査中です。 保険金は、契約者あるいは保険金受取人からの請求を受けて保険会社が支払うものですが、現在調査の対象となっているのは、「請求を受けていて保険金を支払わない」という不払いだけでなく、「保険金を請求しない契約者・受取人に対して、支払請求をするようにアドバイスしない」と不払いということになるようです。

そんなさ中、朝日新聞では、第一生命が当初行なっていた保険金請求を催促することを、「手続きが大変だからということで途中でやめていた」というニュースを発信しています。
   http://clubaa.asahi.com/news/business/update/0314/076.html

まさに今問題になっていることの丸っきり逆の行為ですから、これはどこまで問題になるのでしょうか。 損保と違い生保では通常、契約には解約返戻金があります(最近では初めから解約返戻金のない商品も増えてきてはいますが)。

保険料を途中まで払ってやめてしまっても、失効後解約返戻金があれば、それは請求すれば受取ることができます。大した金額ではないので、手続きするのも面倒だしと契約者がそのままにしていると、保険会社としてはそれも不払いということになるようです。

保険会社が契約者に対して請求を勧める・催促するということをしないと「不払い」だということになります。これを全件洗い出して、しかるべく通知や催促をしたかしなかったか確認するとなったら、気の遠くなるような作業です。データがコンピュータに入っていれば良いですが、このようなケースではすべて過去の契約の書類を1件ずつ見ながら確認しなければならないので、大量の人海戦術が必要です。

大手生保では数千人規模で、社員をそのための調査に投入しています。その分日常業務は残った人が何人分もやらなければいけなくなってしまうので、大混乱になっているようです。

ちょうど4月からの保険料率の改定その他のために、約款その他募集資料を全面的に入れ替える(要するに前の書類を全部捨てて新しい書類に入れ替える)作業や、保険料の試算用プログラムの入れ替えなどをしなければならない時期ですから、尚更やっかいです。

しばらくしたら、また生保の不払いの処分が発表されるのかなと思います。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)
http://www.acalax.jp