2006年 11月 27日  inswatch Vol. 330

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【4】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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アドバンスクリエイトの9月末決算と業績予想の見直し

保険代理店のアドバンスクリエイトが11月22日に9月末決算を発表しました。 決算発表の当日に業績予想の見直しを発表し、
   
http://www.advancecreate.co.jp/ir/pdf/061122_1.pdf
そのあとすぐに決算短信を発表しています。    
    http://www.advancecreate.co.jp/ir/pdf/061122tanshin.pdf

何のための業績予想の見直し発表なのか、とも思いますが、2006月9月期の業績予想だけでなく、2007年9月期の業績予想もすることがこの予想見直しの発表の目的なのかもしれません。

これらの内容は、2006年9月末の決算について、経常利益6億円の予想を経常欠損17億円に変更し、当期純利益を3億円の黒字から19億円の赤字に修正する、というものです。 22億円の下方修正、ということになります。

その理由は、代理店としての売上に計上していた保険会社からの分担経費の計上方法が長期分割払いに変わったこととボーナス手数料の売上計上時期が翌期にずれたことのために、売上高が23億円少なくなってしまったこと、となっています。

これが保険会社からアドバンスクリエイトへの支払方法の変更、ということなのか、会計上の収益認識時期の変更、ということなのかは発表資料からはよくわかりません。

この発表を受け、アドバンスクリエイトの株価はかなり下落しているようです。 株価の変動を確認してみると、
    http://quote.yahoo.co.jp/q?s=8798.j&d=c&k=c3&z=m&h=on

6月に40万円くらいだった株価が最近では8万円くらいにまで大幅に下がっています。
この株価下落が今回の業績修正を織り込んだものだったとすると、会社の発表時期の問題になります(見直し前の黒字決算は8月15日に発表されています)。 逆にこれまでの株価の動きが今回の発表とは無関係だったとすると、今回の発表の影響はこれから株価に織り込まれることになりますのでこれはこれで大変です。

アドバンスクリエイトでは、今回の修正は収益の計上時期の変更でしかないので、当期に計上できなかったものは翌期以降に計上され、時期がずれる分、額が増加する、と説明しています。また、変更は一過性のものなので、翌期にはまた決算が黒字に戻る、としています。

アドバンスクリエイトは株式を公開している会社ですから、決算発表の当日になって突然このような大幅な修正が行なわれる、というのはかなり異常な事態です。9月末決算の話ですから、もし保険会社側で支払方法を変えたのであれば9月末までにそれは明らかになっていたはずです。会計処理の方式を変えたのであれば、決算のぎりぎりまで会計士との議論を続けていたのかもしれません。またそうなると、前期までの会計処理が妥当だったのか、という話にもなるかも知れません。

アドバンスクリエイトではこの決算発表にあわせて40ページもの業績説明資 料、を発表しています。
     http://www.advancecreate.co.jp/ir/pdf/061122setsumei.pdf
この資料はアドバンスクリエイトの各チャネルごとの新契約の件数、ANPの推移や保有契約件数の推移なども公表しています。また、来店型店舗の募集に関する来店客数、資料請求数、申し込み件数などや、第1分野、第2分野、第3分野別の件数や平均保険料などかなり詳しい情報も入っていますので、代理店の皆さんの経営の参考になるかもしれません。

保険会社の収益構造は、新契約獲得に費用がかかって、新契約が獲得できるとその後長期的にほぼ確実な収益が期待できます。その費用と収益のタイミングのずれを修正するためにEV(エンベッデッドバリュー)などの経営分析手法を使っています。代理店の経営でもこの費用と収益の時期のずれは同様に生じます。そのため、アドバンスクリエイトでは将来の代理店手数料収入の現価(現在価値)を計算し、その新規獲得額および残高を重要な経営指標としています。これについてもこの業績説明資料の中で説明されていますので、これらも代理店経営の参考になると思います。ちょっと見てみてください。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)
http://www.acalax.jp