2006年 8月28日  inswatch Vol. 317

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【4】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

生保標準生命表の改定

日本アクチュアリー会が標準生命表を改定しようとしています。

現在改定案を公表し、パブリックコメントの手続きに入っています。(残念ながらコメントの締切は8月18日までです)。
http://www.actuaries.jp/info/seimeihyo_pb.html

この標準生命表は生保会社の標準責任準備金の計算に用いられるものですので、 多くの場合保険料率計算にも使われることになると思います。

前回のものが「生保標準生命表1996」とよばれているので、今回のものは「生 保標準生命表2007」とよばれる予定で、2007年4月から使用されることになるよ うです。11年ぶりの死亡率改定です。

これ以前は生保会社の生命表は大体5年位で改定されてきたので、今回の改定 は2回分の改定を一度に行なうというものになります。

今まで死亡率の改定を遅らせたということは、その分生保会社が死差益を確保 し続けたということですから、バブル崩壊後の利益の逆ざやがそれだけ負担が重 かったということになります。またここへ来てようやくバブル崩壊後の痛手から 立ち直り、生保各社も予定死亡率の引き下げ・予定利率の引き上げの余裕が出て きたということになります。

この標準生命表ですが、死亡保険用・年金開始後用・第三分野(即ち医療保険 等)用と、3種類の生命表が作られています。  定期保険・養老保険・終身保険などには「死亡保険用の生命表」が使われます。 個人年金保険の年金額を計算する場合には、「年金開始後用の生命表」が使われ ます。

「第三分野用」というのは今回初めて作成されたもので、医療保険の保険料や 責任準備金の計算に使われることになります。  定期保険・養老保険・終身保険などでは実際死亡率が高いほど保険会社の支払 いが多くなりますので、あらかじめ予定死亡率を高くして保険料を割高にしてい ます。

個人年金の年金開始後の年金額の計算では、実際の死亡率が低いほど保険会社 にとっては年金の支払が多くなりますので、あらかじめ予定死亡率を低くして年 金額を少なめにしています。

今回の第三分野用の死亡率も、入院や手術や発病などの給付の発生率は年齢が 高い方が高くなるので、実際の死亡率が低いほど保険会社にとっては給付の支払 負担が増えることになり、保険会社にとってはあらかじめ予定死亡率を低くして 保険料を割高にしておくということになります。

生命保険会社では1つの契約で保障・給付の内容によっていくつもの生命表を 使い分けて、どんなケースでも赤字にならないように工夫しているというわけで す。

この死亡率の改定と併せて、多分予定利率の見直しも行なわれることになると 思います。来年4月は全面的な保険料率改訂が見込まれます。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)
http://www.acalax.jp