2006年 7月31日  inswatch Vol. 313

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【4】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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生保版「製販分離」のきっかけになるか

生保業界でつぎつぎと新しい動きが出ています。

2006年3月期の決算案では三利源の開示をしたりエンベッデッドバリュー(EV)の開示をしたり、という動きが出てきていますが、その後、6月末には第一生命が生保子会社を作る、と発表しました。
  生命保険子会社の設立について        
  http://www.dai-ichi-life.co.jp/news/pdf/nr06_27.pdf

また7月のはじめには三井生命と住友生命は三井住友銀行と共同で保険代理店会社を作る、と発表しています。
来店型保険代理店事業に関する合意について
  http://www.mitsui-seimei.co.jp/corporate/news/pdf/20060711.pdf

第一生命の子会社は銀行窓販専用の生保会社を新規に100%子会社として設立する、ということのようです。このような窓販専用子会社というのは、T&DグループのT&Dフィナンシャル生命や東京海上日動フィナンシャル生命、三井住友海上メットライフ生命などがありますが、これらは破綻生保を引き受けて子会社にしたり撤退する外資の子会社を買収したり、あるいは外資との合弁の会社だったり、 ということで、今回の第一生命のように100%子会社として新規に設立する、というのは初めてのことです。

窓販ということであれば生命保険会社にするしかありませんが、対象とするマーケットあるいは商品によっては生命保険会社免許でなく少額短期保険会社の登録の形で新規設立の子会社でビジネスの幅を広げる動きが今後とも出てくるかもしれません。

第一生命はこれまでも積極的にアフラックや損保ジャパンと代理代行契約を締結して販売商品や販売チャネルを拡充してきました。銀行窓販は販売チャネルは銀行ですから今回の子会社は販売商品の拡充のためでしょう。

三井生命と住友生命の子会社代理店の方は、来店型の乗合代理店として外資系生保を含めて多数の保険会社の代理店とするようです。保険会社が代理店を持つ、というのもこれが始めということではありませんが、今回代理店は規模的にも乗合の会社数にしても今までにないほど本格的なものです。

代理店になる、ということで代理店契約をする保険会社の商品情報や販売ルールなどを少なくともその代理店は入手することが出来るようになりますので、それぞれの保険会社はその代理店と乗合代理店の契約をするかどうか、興味深い所です。

三井と住友は生命保険以外はほとんどの業種で既に合併・一体化を済ませています。今回の共同子会社が生保ビジネスの分野での一体化の契機になるのかもしれません。

従来、日本の保険会社、特に生命保険会社は保険ビジネスの全てを自分の会社で抱え込む、というやり方でしたが、このような動きは、いよいよ保険業界でも製販分離が真剣に検討される契機になるのかもしれません。今後の動向を見守りたいと思います。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)   
http://www.acalax.jp