2006年 6月19日  inswatch Vol. 307

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【5】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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生保決算とエンベッデッドバリュー(EV)の開示

各社の2006年3月期の決算案が発表されています。今年の生保会社の決算はデイスクロージャーが注目点のようです。

先月話題にした利源分析、三利源の開示に続いてエンベッデッドバリュー(EV)を開示する会社もかなり増えてきました。

現在生保会社は38社ありますが、そのうち13社が決算案の発表と同時にエンベッデッドバリューを開示しています(各社のホームページから取ることができます。) 38社のうち外資系の会社が16社ありますので、これを除くと残りは22社、22社中13社となるともう半分以上、ということになります。

外資系の会社は会社グループ全体でエンベッデッドバリューを計算して開示するのが普通で、グループ内の個別の会社のエンベッデッドバリューはあまり公表しません。

エンベッデッドバリューというのは保険会社の価値を評価するもので、その価値の所有者は会社の持ち主です。株式会社であれば株主、相互会社の場合は社員(契約者)です。損保系の生保会社の場合は株主は親会社の損保会社ですから、その株主が実質的にその生保会社の持ち主ということになります。

今回相互会社では住友生命だけがエンベッデッドバリューを開示しました。日本生命はじめ他の相互会社がいつごろからエンベッデッドバリューの開示を始めるのか興味があります。株式会社になっている三井生命も今回エンベッデッドバリューを開示しています。

三利源の開示ではニ、三の会社が開示を始めた途端、日本生命その他の相互会社も一気に横並びで開示することになりました。同様に今後、たとえば9月くらいを目標に他の会社も開示を始めるのか、来期からになるのでしょうか。

今回の開示は今の所13社が決算案の開示と同時にエンベッデッドバリューを開示していますが、エンベッデッドバリューの開示には別に特段のルールもありませんのでこれが多少遅れても何の問題もありません。今回決算案の開示と同時にエンベッデッドバリューを開示している会社も以前は決算案の開示よりかなり遅れてエンベッデッドバリューを開示していました。

エンベッデッドバリューは保有契約から将来得られる利益の現在価値と、実質的な純資産の価値との合計ですが、このエンベッデッドバリューの値自体を計算するだけでなく、それが前年度末から今年度末までにどれくらい増加したか、どのような要因で増加したかが重要な情報になります。また、保有契約の価値のうち、その年の新契約の価値がどれくらいの額になるかも重要な情報です。

エンベッデッドバリューの開示では計算の前提条件の開示と、これらの額の開示が最低限共通な必要条件になっていますが、その点からすると住友生命の開示はチョット違っています。保有契約の現在価値(および新契約の価値)だけが開示され、実質的な純資産の価値の開示は行なわれていませんし、前年度末の額(および前年からの増加額)も開示されていません。かなり中途半端な不十分な開示です。よっぽどあわてて開示したのでしょうか。

いずれにしてもエンベッデッドバリューの開示が一層進展し、もっと詳細な内容も開示されるように望みたいと思います。

(生命保険アクチュアリー (株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp