2006年 5月22日  inswatch Vol. 303

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【4】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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生保決算における3利源開示

 ゴールデンウィークも終わり、保険会社各社は決算のまとめの最終段階に入っている所です。生保会社の決算は3月末で株価が上昇し、それにもかかわらず円の為替レートはそれほど円高にもならず、債券の利回りもそれほど高くならなかった(その結果として債券価格があまり下がらなかった)ことにより、概ね好調であったのではないかと思います。契約者配当の増配や予定利率の引き上げ(といっても一部の商品の0.1%程度の引き上げですから、大したことはありません)など、景気の良い話が聞こえてきます。

明治安田生命は、昨年末の保険金不払問題で悪くなったイメージを回復しようと、今期の決算でいわゆる三利源を開示すると発表しました。
http://www.meijiyasuda.co.jp/profile/release/2005/pdf/20060331.pdf

これを受けて、第一生命も今期の決算から同様に三利源を開示すると発表しています。
http://www.dai-ichi-life.co.jp/news/pdf/nr06_12.pdf

この三利源の開示は以前から経営内容を明らかにするために開示すべきだ、いや企業秘密だから開示できない、と議論されてきたトピックです。この2社の開示の方針を受けて、他の会社がどうするか注目されています。

この三利源の開示がどこまで意味のある情報になるのかという問題もありますが、開示しないよりは開示したほうが良いかも知れません。とはいえ実際に開示するとなると、この開示の仕方で会社の状況をミスリードするような開示になってしまうかも知れません。経営状況に関する他の指標と同様、この三利源というのもある程度操作可能な指標ですから。

さらに、生保会社は従来から決算報告の一部として『利源分析』を報告していますが、今回の開示の内容はその利源分析とは別ものになります。

利源分析では会社の未処分利益(未処分剰余)を費差損益・死差損益・利差損益・責任準備金関係損益・価格変動損益・その他の損益に分解するものですが、今回の明治安田あるいは第一生命の開示は、いわゆる基礎利益を費差益・危険差益・逆ざやの三つに分解するものです。

分解する元の利益が違うこともあって、費差益は費差損益と、危険差益は死差損益と、逆ざやは利差損益とほぼ見合うものになりますが、いろいろな点で違いが出てきます。

今回の開示の結果、要するに生保会社の利源分析が2本建てになってしまうと いうことのようです。そうなると生保会社の収益状況を理解する指標としては、なおさらわかりにくいものになってしまうかも知れません。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)        
http://www.acalax.jp