2006年 2月27日  inswatch Vol. 291

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【2】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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第三分野の商品の責任準備金積立てルールの変更

2月10日に第三分野の責任準備金等ルール整備に関する保険業法施行規則の変更案等が公表され、パブリックコメントの手続きに入りました。
   http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/hoken/f-20060210-1.html  

今回はかなり専門的・技術的な内容なので、この手続きも形式的なものでそのまま実施されることになるものと思います。  

責任準備金の積立ルールなんて、アクチュアリーが知っていればそれで良いだろうと思うかも知れませんが、後程説明しますが実は営業の手続きに関する事項もこの中に入っています。もしかすると大変なことになるかも知れません。

責任準備金の積立ルールは、養老保険・終身保険・定期保険などの伝統的あるいは標準的な保険種類について、標準責任準備金という形でその計算方式が定められています。1年前にはこれに加えて、変額保険・変額年金保険についても責任準備金積立てのルール変更がなされ、多くの会社で変額保険が売り止めになったり、保険料が引き上げられたりしました。

今回は第三分野すなわち医療保険に関しても、標準的なルールを定めるというものです。

医療保険は単純な死亡保険と違って保障の内容・範囲も非常にバラエティに富んでいるので、標準死亡率を作って一丁上がりというわけにはいきません。

その代わりそれぞれ会社ごと商品ごとに保険事故の発生率を合理的に予測して、保険料計算に使用した予定発生率がその予測を下回っていないか、10年間の収支計算をして保険料積立金が不足することにならないか確認することになりました。  予定発生率が低過ぎる場合は、危険準備金を積み増す。保険料積立金が不足する場合は、不足分を追加で積立てるという具合です。いずれにしても保険会社の負担増となります。

第三分野商品の商品認可手続きにおいても、保険計理人の意見書の添付が求められます。

さて営業に関連する部分ですが、多くの第三分野の商品では、基礎率の変更権(実際の発生率が変化した時に予定発生率を変更して保険料を変更することができる旨の規定)が約款に記載されていますが、これに関してどんな場合に・どの部分が・どのように変更されるか、保険の募集時に書面で説明することが求められます。さらに契約成立後も基礎率変更に該当するかどうか、実際の発生率はどのように推移しているか等について記述した書面を、毎年、募集人が契約者に交付するということになります。

実務的にどのような形になるか(本当に個々の募集人が毎年何かするのか、募集人の代わりに保険会社が何かするのか)わかりませんが、場合によっては医療保険の営業活動に大きな影響が出るかも知れません(とりあえず、来年の4月以降の新契約が対象となるようですが)。

パブリックコメントの締切は、3月9日(木)です。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)
http://www.acalax.jp