2005年 12月19日  inswatch Vol. 281

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【4】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

可能になる柔軟な予定事業費率の変更とその影響

11月24日付けで金融庁から、「保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令など」(案)が公表されました。
  http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/hoken/f-20051124-1.html  
内容は翌日のたとえば日経新聞などに、「保険料、下げやすく」「金融庁認可簡素化」などの見出しの記事で読まれた方も多いと思いますが、保険料のうち予定事業費率を従来より柔軟に変更することができるようにすることにより、保険料を下げやすくするというものです。

法律の改正の内容は、算出方法書(保険会社が金融庁に提出する保険料や責任準備金の計算方法や予定基礎率等を記述してあるものです)について、予定事業費に関する記載を不要とするというものです。

この算出方法書というのは、その中味の変更についてその都度保険会社が金融庁に変更の認可申請をし、認可を受けてはじめてその修正を適用した、たとえば保険料の改訂を実施できるというものです。

言い換えれば今回の改正で、予定事業費について算出方法書に記載がなくなれば、その内容を変更するのに認可申請の手続きが要らない、即ち保険会社が自由に保険料率を変更することができるということになります。

銀行窓販や大型代理店による大規模販売に関して、特別に予定事業費を少なくした安い保険料の商品を提供することができる。その保険料の変更も保険会社の内部手続きだけの簡単な方法でできるようになるということです。  法律の改正案では、「損保の予定事業費率の記載を不要とする」という形ですが、生保の方でも法律は変えないままですが、実質的に損保と同様に柔軟な予定事業費率の変更を可能にするということのようです。
   http://cgi.linkclub.or.jp/~lax/bbs/wforum.cgi?mode=all_read&no=919&page=0

銀行や大型代理店など、大きな販売力を持った代理店に安い保険料の商品を提供することができると、なお一層販売成績を上げることができそうですが、それ以外の代理店は逆に高い保険料で大型代理店と対抗しなければならないということになるのかも知れません。  コストに見合った価格設定というのは確かに合理的ですが、その結果販売チャネルが大型代理店に極度に依存するようになると、長い目で見て保険事業全般に対して必ずしも良いこととばかりともいえなさそうです。

今の所この法律改正案はパブリックコメントの段階(締め切りは12月26日)ですが、実施は2006年4月からということになりそうです。  

これを機会に、親しくしている保険会社が皆さんの代理店で売る商品の保険料を安くしてくれるのか、手数料を高くしてくれるのか、考え方を聞いてみるのも面白いかも知れません。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)