2005年 11月21日  inswatch Vol. 277

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【3】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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銀行での変額年金販売のあり方

明治安田生命の保険金不払では、役員9人の辞任に続いて役職員100人を超す処分ということになりました。何とかして金融庁に処分が十分なものだと認めてもらわなければ、本格的に商売を再開できないわけですから仕方がないことかも知れませんが、会社の上司・役員の指示に従った結果として処分の対象になった職員はとんだ迷惑ですね。

保険会社の役職員の責任は明確にしましたが、今回も監督すべきお役人には何のお咎めもなしというのもいささか疑問のあるところです。また明治安田生命の問題が大きく取上げられることによって、損保会社の不払い問題はほとんど注目を浴びることがなくなっていますが、事の性格は異なるにせよ、こちらもしっかりとしたチェック体制の確立が求められるところです。

そのような中、また新たな火種が見つかったようです。

先日、NHKの夕方7時のニュースに続く7時半からの「クローズアップ現代」という番組が、【変額年金】の問題を取上げていました。

「銀行員が売るので絶対安全な商品だと思って買った」とか、「銀行のカードの切り替えだということで銀行に呼び出されて行ったら、変額年金を買わされた」とか、「商品内容を全く理解しないで購入した高齢者」が何人も登場しています。

あとから家族が気がついて、「錯誤に基く契約」だということでクーリングオフをしようと思っても、消費者が自ら銀行に行って加入の手続きをしているのでクーリングオフの対象とはならないとか、色々な問題点が指摘されていました。

大昔(といっても20年くらい前)変額保険が日本に登場した時、銀行と保険会社が一緒にローンセットの変額保険を販売し(もちろんその当時、保険の銀行窓販は認められていなかったので、銀行は正面きって保険を売ることはできなかったのですが)、その後バブルがはじけて、このローンセット変額保険に入ったために財産をなくしたり住む所をなくしたりする老人が続出し、中には自殺する老人まで出て来て大きな社会問題になった、その当時のことをまざまざと思い出しました。

NHKのこの番組でクローズアップされたということは、今後かなりのインパクトで反響が広がるような気がします。非難の矛先が銀行に向くのか生保会社に向くのかまだ何ともわかりませんが、いずれにしても大変な時限爆弾です。

このinswatchの以前からの読者にはお馴染みの、生活経済ジャーナリストで金融審議会委員でもある高橋伸子さんも番組に登場し、相変わらずの鋭い切れ味で銀行・保険会社の営業姿勢を批判していました。

これらのことが保険商品の銀行窓販にどのように跳ね返って来るのか、推移を見守りたいと思います。まさかその効果を狙って誰かがNHKの番組に取上げさせたということではないでしょうが。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)