2005年 9月 19日  inswatch Vol. 268

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【4】業界ウオッチング                    坂本 嘉輝

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

生保契約の買取ビジネスに対する司法判断  

郵政民営化解散の総選挙も自民党の大勝で終わり、これから自民党も民主党もその他の政党も、将来に向けての体制作りで右往左往することになります。その間お役人は議員の先生に邪魔されないで、着々と仕事を進めることができるのでしょうか。

先月も取り上げた、損保会社の保険金不払いですが、16万件、67億円ということになったようです。損保会社も金融庁もどうやってこの問題に決着をつけようというのでしょうか。あくまで支払いもれであって不払いではない、という理屈がいつまで続くのでしょう。保険会社の社員に言わせると、『社員も本当に知らないんです』ということになりますが、保険会社の社員、保険代理店がここまで膨大な数の不払いに対して誰も気がつかない、なんてことがありうるのでしょうか。『そんなこと自慢するなよ』と思います。

話は変わりますが、今年の初めちょっと話題になった生命保険契約の買取ビジネスですが、第一審の判決がここ1、2ヵ月中に出るようです。とはいえそれで決着するわけではなく、どちらが勝っても負けたほうは控訴・上告するでしょうから最終的な決着がつくまでにはまだ何年もかかることになりそうです。

保険契約の買取りというのは、買取る側・売る側・保険会社それぞれ言い分があり、ある意味でもっともな議論なのですが、実際には保険契約の買取りというのは珍しい話ではありません。保険の中でも専門家同志の再保険の世界では、事故の起こる前の保険契約の売り買いは当然のこととして、事故が起こった後での保険契約の売り買いも、ごく当たり前になされています。

保険契約の買取りをするには、その契約の価値をきちんと評価しなければなりません。そのためには保険契約の内容の正確な理解、被保険者の健康状態に関する適切な評価が必要になります。

保険会社は保険の引受け、リスク評価は自分達の専門領域なのですから、やみくもに保険契約の買取りに反対するのではなく、代替案として自分で買取るという方向も検討してみてはどうでしょう。

今では当り前の解約返戻金ですが、生命保険が始まった時は必ずしも保証されているものではありませんでした。契約を解約しても保障がなくなってしまうだけで解約返戻金がもらえないのであれば、それをもっとまともな値段で買い取ってくれる人に売りたい、というのは当然の話です。赤の他人の第三者に契約を売るのが好ましくないのであれば、保険会社が買取ってあげればよいということになります。解約返戻金は、元をたどれば「保険契約を保険会社が買い戻す際の値段」ということから始まっています。

いずれにしてもどのような判決が出るのか楽しみです。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp