2005年 2月 21日 inswatch Vol. 238
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【4】業界ウオッチング 坂本 嘉輝
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保険の比較広告規制の緩和をめぐって
2月1日に共同通信発で、保険の保険料割引が多少自由化される、比較広告も可能になるというニュースが出て、2月13日に日経新聞が追いかけるように保険の比較広告が全面解禁というニュースを出しました。
(日経2月13日朝刊3ページ、または)http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt36/20050212NN000Y68712022005.html
(共同通信の記事は) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050201-00000195-kyodo-bus_all
記事を読んでみると同じニュースを、共同通信の方は保険料割引にウェイトを置いて、比較広告も付け加えたという形で報道し、日経新聞の方は比較広告の方を全面に出して、それに元本割れリスクのある商品の販売規制強化を追加し、保険料割引については省略しているということのようです。
多分何らかの動きが金融庁サイドで行なわれているのかも知れません。金融審議会の委員も一部交代したので、新たなテーマ探しが始まったのかも知れません。
日経新聞の記事では、比較広告は基準が明確でないということで業界で自主規制していると解説していますが、これはもちろん当局が止めていたことです。その結果として声の大きな会社、資金に余裕のある会社が耳障りの良い広告を繰り返すことによって営業成績を上げてきました。これを是正しようとしているのかも知れません。 だとしたら比較広告ができるようになったら尚更、声の大きな会社が自分に有利な比較広告をするようになって売上げを伸ばすのではないかと思われます。比較広告のルールをどんなにきめ細かく作ってみても、広告である以上自社に有利なところに焦点を当ててアピールするのでしょうから。
商品を比較してその良し悪しを明確に認識しているのは実際に営業している人間、特に複数の会社の商品を取扱っている乗合代理店です。
保険会社が行なう比較広告などではなく、営業現場での商品の比較説明を解禁することの方が重要なはずです。
とはいえ専属外務員には商品比較はできないとか、営業現場では契約獲得のために不十分不正確な比較をするだろうから、保険会社が全責任を負う広告についてだけ比較広告を解禁しようとか考えているのかも知れません。
とはいえ公平でわかりやすくというのは、言葉は簡単ですがそれが自動的に実現できるようなルール作りなど、そう簡単にできるわけはありません。
今のところ上記の記事を読む限りでは本格的な動きになるのかどうかも不明ですが、あまり期待しないで今後の進展を見守りたいと思います。
(生命保険アクチュアリー (株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp