2005年 1月 24日  inswatch Vol. 234

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【4】業界ウオッチング                    坂本 嘉輝

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発信し続けるアクチュアリーの大長老

アクチュアリーとして様々な意見表明をしている人に浅谷さん、という齢80歳の大長老がいます。もともと大蔵省のお役人で、大蔵省が本気で自前でアクチュアリーを採用、育成しようとしていた時に最初のアクチュアリーとして採用された人です。

その後しばらくして大蔵省はアクチュアリー採用・育成計画を中止してしまったので長い間保険行政を所管する大蔵省にはアクチュアリーがいませんでした。 厚生省には年金や健康保険のためにアクチュアリーが何人もいて、郵政省にも簡易保険のために何人ものアクチュアリーがいたのですが。    浅谷さんは引退したあともアクチュアリーとしての仕事に対する思い入れが強くて、いまだに行政や業界に対していろいろな提言をしたり、海外の参考文献を翻訳して紹介したりしています。

私は基本的に役人には一切何の期待もしないで、自分のことは自分で考えるようにしなければならない、という考え方ですが、浅谷さんの考え方は、お役人がまずしっかり勉強し、正しく現状を認識した上で的確なルールを作って民間企業を教育・指導し、監督しなければならない、という考え方ですから、その意味ではまるっきり逆です。

しかし問題意識などは共通する所があり、浅谷さんの意見は参考にしています。浅谷さんは毎週日曜日の夜に自分のホームページを更新し、新たなコメントを発表しています。

最近の1月16日に発表したコメントには『金融改革プログラム』に関連して保険商品の比較、特に医療保険の適正な比較をするための方法を提案しています。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/asatani/kiji0501.htm#kiji050104

保険業法では必ずしも商品を比較することは禁止されているわけではないのですが、適当な比較の方法がないため実質的に禁止されているのと同じようなことになっています。

とはいえ現実にはやはり商品を比較しないで勧めることはできないので何らかの形で比較は行なわれているはずです。そのやり方の参考に読んで見てください。本当の意味で生命保険の専門家が現状をどのように認識しているか、参考になるコメントも他にもたくさん読めます。

なお、金融庁のお役人にとっては大先輩にあたる浅谷さんの意見は、お役人さんたちからは文字通り敬遠、すなわち、すばらしい意見ですね、と誉められてそれだけで全く無視されている、というような状況です。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp