2004年 8月 23日  inswatch Vol. 212

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【4】業界ウオッチング                    坂本 嘉輝

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変額年金の責任準備金積立方法の法律改正案

◇焦点は新契約費負担の繰り延べの取扱い  

変額年金保険の責任準備金の積立方法について、金融庁は法律改正案を作り、現在意見公募の手続きに入っています。
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/hoken/f-20040810-1.html  
その内容は、責任準備金を追加で積み立てること、危険準備金を追加で積み立てること、ソルベンシーマージン比率の計算上、分母のリスクの額に変額年金の最低保証に関する部分を追加することです。  

現在変額年金の責任準備金は積立金をそのまま積んでいるだけなので、最低死亡保証や元本保証などに対する責任準備金が必要なのはもちろんですが、問題は新契約費負担の繰り延べの取扱いです。  

外資系の会社から出ている案はこの両方がバランスよく考慮されていますが、金融庁の案では新契約費の繰り延べの問題には全くふれていません。  

さらに、通常、責任準備金は平準純保険料式の積立が必要とされるのですが、新発の会社、その余裕のない会社の場合にはチルメル式の積立を特別に認めることによって実質的に新契約費の繰り延べを認めています。今回の金融庁の案は最低死亡保証や元本保証などのついた変額年金に限ってそのような特別扱いを認めない、という事を明確にした法律改正になっています。  

今の責任準備金積立ルールのままでも新契約費負担のためにそれを主に売っている会社は毎年のように増資をせざるを得なくなったり再保険を使ってむりやり利益のかさ上げをしたり、苦しい努力を続けています。今回の責任準備金積立ルールがそのまま適用されることになると、それは外資系の生保に対して変額年金の販売を実質的に停止させる、あるいは急ブレーキをかけることになります。

◇業際問題になりかねない改正問題  

今回のルール改正はとりあえず外資系の会社に待ったをかけ、旧大手の日本社が体力回復してこのマーケットに参加できるようになるまで、時間稼ぎをしようとしているかのように思えます。  

変額年金の販売は銀行の窓販等、銀行や証券会社にとっても無視できないほどの収入源になっています。保険会社側の理由で一方的に変額年金の販売が制限されるのは業際問題になるかもしれません。  

8月20日に開催された日米保険協議でも簡保の問題とあわせてこの変額年金の責任準備金の問題が大きなテーマとして取り上げられています。様々な政治問題も抱える変額年金の責任準備金積立ルールの改正問題、今後の推移を見守ってください。         

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp)