2004年 7月 19日 inswatch Vol.207
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【4】業界ウオッチング 坂本 嘉輝
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木村剛さんの公的年金改革案
◇公的年金の問題 参議院選挙が無事終了しました。
民主党と公明党は勝利を収め、自民党は大敗を免れ、結局大きな変化もなしに元の日常に戻りつつあります。
公的年金の問題も国会での審議ではほとんどまともな議論が行なわれなかったのですが、国会が終わったあと、参院選の過程で与野党の議論がようやく活発になってきました。とはいえ国会が終わり、法律も成立してしまったので、普通な らこのままでお終いです。
◇脱退権を認めるという問題提起
ここで、金融マルチタレントの木村剛さんが新たな動きを起こそうとしています。
木村剛さんというのは竹中平蔵さんのブレインとして金融制度改革にいろいろ注文をつけたり、新しい銀行(日本振興銀行)作りに参加したり、なかなかコンサルタントとか評論家とかの枠に収まりきらない人ですが、公的年金についても独 自の改革案(柱は公的年金に脱退権を認める、というトリックのような案ですが)を主張しています。
◇試算用のデータとプログラムを整備
その案はともかく、厚生労働省の手による財政再計算の中身を公開し、誰でも独自の案で財政状況の試算をすることができるような共通のインフラストラクチャーを作ろう、というなんとも大層な作業を始めようとしています。
無償の公開型のコンピューターの基本ソフトであるLinuxの開発に倣って専門家やボランティアを募って全ての情報を公開しながら試算用のデータとプログラムを整備しよう、ということです。そのための最初のステップとして情報公開法に基づき厚生労働省から厚生年金・国民年金の財政再計算用のプログラムとデータを手に入れています。
この動きについては
http://www.asahi.com/money/pension/news/TKY200407150435.htmlまた、木村剛さんの側の発表は
http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/05_/index.html を見てみてください。意図的かどうかわかりませんが、かなり煽情的、扇動的なコメントで、悪ふざけが好きな若い人をひきつけているようですが、いずれにしても若い人を巻き込んだ形で年金の議論をする場ができることは良いことかもしれません。
せっかく出来た年金制度改革法、次に改正されるのはいつになるか全くわかりませんが、今度こそ国民全体を巻き込んだ、まじめな議論ができることを期待したいと思います。
(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)