2004年 6月 28日  inswatch Vol.204

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【4】業界ウオッチング                    坂本 嘉輝

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今期生保決算から浮かび上がってきた問題

生保会社各社の決算の主な数字がそろってきました。各社のホームページから採ることもできますが、生命保険協会のホームページから採ることもできます。 この方が各社分をいっぺんに取れるので便利かもしれません。
http://www.seiho.or.jp/disclose/00.html

◇株高で一息「作戦タイム」

今期決算は株価の上昇にかなり助けられた決算です。一年前に予定利率引下げの議論をしていた状況からすると、しばらく作戦タイム、といったような感じです。

◇債券主体運用会社にはマイナスに働く

株価は上昇しても逆に債券の価格は下落していますから、株式主体で資産運用している会社と債券主体で資産運用している会社では有価証券価格の変動の影響の現れ方が大きく異なります。旧大手を始めとする漢字生保や元漢字生保(破綻処理された会社と破綻処理前に買収された会社の両方)についてはおおむねプラスに働いています。逆に外資系のカタカナ会社、損保の子会社のひらかな会社の場合にはマイナスに働いた所が多かったようです。 債券価格が大幅に下がってしまうと実質的に債務超過状態になってしまって早期是正措置の適用対象になるかもしれない、という心配もありましたが、そこまでのマイナスにはならずに済んでいるようです。

◇財務上の健全性ウオッチ会社は広がった

昨年までの決算ではどうしても注目は旧大手日本社の一部の会社の財務上の健全性でしたが、今回の決算からはもう少し視野を広げてみる必要があることがはっきりしてきました。もちろんそれらの会社の問題が解決したわけではありませんが、それと同時に一部の破綻処理した会社、破綻処理しないで外資に買い取られた会社、その他カタカナ会社に心配な会社が増えてきました。

◇追加投資拒否の波紋

三菱自動車のケースのように、既に出資した資金を犠牲にしてでも追加的な資本投入を拒否する、という行動が現 実のものとなりましたから、従来のように外資系生保は海の向こうに親会社が控えているから心配ない、というわけには行かなくなってきたような気がします。日本の子会社に投入した資金を捨てる覚悟さえしてしまえばそれ以上の資本投入はしなくて済むことになりますから。

◇一時払い変額年金はとてつもない金食い虫

また、一時払い変額年金がとてつもない金食い虫だということも明らかになってきたようです。この商品を主力に販売している会社はどこも増資や再保険の手当てで自己資本の積み増しをはからなければならない状況になっています。 詳しくはまた稿を改めて解説したいと思います。         

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)