2004年 2月 2日  inswatch Vol.183

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【4】業界ウオッチング                    坂本 嘉輝

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銀行窓販論議の怪しさと金融機関の「製販分離」

◇金融庁のアリバイ作り?  

銀行の保険窓販の全面解禁、というアドバルーンを上げて金融審議会の議論が 始まりました。  この会議の議事要旨(議事録の簡略版)が出ています。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/gijiroku/kinyu/dai2/f-20040116_gi ji.html  

例によって銀行窓販に関する賛否両論ですが、生保・損保・消費者・労連サイド が反対、銀行と外資系損保が賛成、という構図です。

金融庁としては検討を進めて何らかの結論を出さなければならない、というだ けの事ですが、思ったより反響があるようです。この銀行窓販の話題も金融庁の アリバイ作り、というだけでいつものように竜頭蛇尾でたいしたこともなく終わ るものと思います。

◇米国のワンストップファイナンシャルサービス  

私が学校を出て生命保険会社に入ったのは昭和52年、1977年(もう4半 世紀も前)ですが、この少し前あたりからアメリカでは金融革命真っ盛り、とい うことで、『ワンストップファイナンシャルサービス』という言葉もその頃勉強 しました(アクチュアリーというのは結構勉強好きで、ヨーロッパやアメリカの動向についてはきちんと追っかけていました)。  

その後、アメリカでも『ワンストップファイナンシャルサービス』が実現して うまく行っている、というような話は聞きません。

新生銀行に行って、スターバックスのコーヒーを飲みながらパンフレットを見 たり、郵便局に行って待ち時間についでにコンビニを覗く、というのは便利だと 思いますが、銀行の窓口で株を買ったり保険の説明を受けたりするのが便利だと は思いません。銀行が本気で保険を売りたいのであれば、窓販などとカッタルイ事をしなくても系列の保険代理店を使えばいいだけの事ですから。  

外資系の保険会社は販売チャネルが広がる事であれば何でもいい、と思ってい るのかも知れませんが、結局何年かしたら誰にも見向きもされなくなる、というような気がします。

◇製版分離を考えるべき  

むしろ、考えなければいけないのは製販分離のことだと思っています。  

今のところ、日本の金融機関は基本的に製販一体型で、製造会社と販売会社が 一体になっていますが、これは必ずしもそうでなければいけない、というものでもないと思っています。  

銀行、証券会社、保険会社がそれぞれ製造会社と販売会社に分かれるのであれ ば、あるいは製造部門に特化する会社がいくつも出てくるのであれば、販売会社の部分については何でも売るコンビニ型の店舗も可能になると思います。  

今のままの製造部門を抱えたまま販売部門だけ何でもあり、というのはかえっ て効率的ではないように思います。  

とはいえ、ここまでの問題意識をもっている金融機関は日本ではまだ殆どない でしょうが。  

この金融審議会金融分科会第2部会の議論に関して金融庁のホームページに資料が載っています。  
  生命保険事業の現状と課題
     http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/siryou/kinyu/dai2/f-20040116_d2si r/01.pdf  
  損害保険事業の現状と課題
     http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/siryou/kinyu/dai2/f-20040116_d2si r/02.pdf  
どちらも力作です。  

マーケットの規模、業績の推移、代理店数・募集人数など販売チャネルの動向、 保険会社の合従連衡、無認可共済の話など情報はかなり盛りだくさんです。業界 (保険会社)が現状をどのように眺めているか、参考になると思います。現在の業 界の全体像を再確認する意味でちょっと大部ですがプリントしてじっくり眺めて みるといいと思います。  

金融庁の方からは、 保険に関する主な検討課題(案)
   http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/siryou/kinyu/dai2/f-20040116_d2si r/03.pdf という資料もあります。   

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)