2003年12月29日  inswatch Vol.178

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【4】業界ウオッチング                    

坂本 嘉輝

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保険会社が普通に「売り買い」される時代  

年末になって慌しい日々が続いています。  三井生命が臨時社員総代会を開いて、正式に2004年4月の株式会社化を決めた 12月19日の金曜日、マスコミでは大和生命が金融庁の検査を受けてどうなるんだ ろうという話がされていたようです。  

その翌日、20日には金融庁が銀行による保険窓販の全面解禁というアドバルー ンを上げ、もちろんお定まりで生保業界は反対の大合唱です。  

そんな最中、保険会社の買収の話が2つ発表されました。  

一つは日立キャピタルによるユナムジャパンの買収で、
  日立キャピタル側  http://www.hitachi-capital.co.jp/hcc/ir/news/2003/031205.html 
  ユナムジャパン側 http://www.unum.co.jp/products/news/20031205.html 
に発表されています。  

もう一つはミレアグループによるスカンディア生命の買収で
  ミレア側 http://www.millea.co.jp/html/news/20031224.html
  スカンディア側  http://www3.skandia.co.jp/PDF/dairi/sk-d/PT/pt2003-42-1_01.pdf
に発表されています。  

日本では戦後(第二次世界大戦後のことです)、保険会社の売買が実質的に行 なわれなくなり、日本進出を希望する外資の保険会社は基本的に、新たな会社を ゼロスタートで立ち上げることしかできませんでした。  

その後オリックス、オリエントコーポレーション、日本信販のクレジット系3 社が生命保険に進出するにあたり、オマハ生命・コンバインド生命・エクイタブ ル生命を買収しました。オマハとコンバインドは日本での事業は支店形式でやっ ていたので、法律的には「営業譲渡」という形になり、エクイタブル生命につい ては日本の株式会社になっていたので「買収」という形を取りました。  この当時は生保の破綻などというのはまだ夢のような話で、単に「外資はいつ 引上げちゃうかわからない」程度の印象だったのですが、その後次々に生保会社 が破綻すると、買収と破綻が同じようなイメージで捉えられているかもしれませ ん。  

今回のユナム・スカンディアの買収も新しい株主が25億円、200億円を払い、 その後多分追加の資本投入をすることになるでしょうから、それだけ将来的に収 益が見込めているということだと思います。  

外資が日本の子会社を売却して日本から撤退するのは、必ずしも日本の子会社 の問題ではなく、むしろ多分に海の向こうの本体の問題であることが多いのです が、今回も同じようなことでしょう。  しばらく前に行なわれたAIGによるGEエジソン生命の買収もあり、日本でもよ うやく生保会社が普通に売り買いされる時代が来たのかも知れません。  

良い会社は高く売れ、良くない会社は安くしか売れない。もっと悪い会社は買 い手がつかない。こうなって初めて経営者も経営改善の意識が出てくるのかも知 れません。  年が明けるといよいよ簡保の新しい定期付終身保険が発売になります。定期付 終身保険、という範疇で考えるよりむしろ、定期付終身医療保険、と考えたほう がいいかもしれません。この商品の発売が業界にどのようなインパクトを与える か、見守りたいと思います。  

本稿をもって、2003年はおしまいです。お世話になりました。  
皆様良いお年をお迎え下さい。  

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)